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リリーフウェルについて

リリーフウェルについて
投稿者:管理者(利光) 投稿日:10月28日(火)15時50分46秒

先日、リリーフウェルに関する問い合わせを頂きましたので、以下に私見を述べます。

リリーフウェルは盤ぶくれ現象の防止対策として地下連続壁などの止水性土留壁の根入先端を下部粘土層まで延長した場合に、止水壁によって締切られた被圧帯水層の「圧抜き」を目的として設置されているようです。(管理者は未経験なので明言できません。)
「リリーフ(relief)」は「(苦痛などの)除去、安心、息抜き」などを意味しますので、リリーフウェルはイメージどおりのネーミングだと思います。

さて、ここで疑問に思うのは、次の2点です。

疑問点1 止水壁によって締切られた被圧帯水層中の被圧水頭は消滅するのか?

止水壁および下部粘土層の透水性が不透水(透水係数=0)で地下水が非圧縮性であれば、止水壁による締切が完了した時点で、被圧帯水層の被圧水頭は消滅します。
しかし、実際には止水壁および粘土層には極小ながら透水性がありますし、止水壁には漏水の原因となる施工継手があります。
また、水には微少ながら圧縮性があり、気泡の混入により圧縮性は増大します。
しかし、水の体積変化率は1気圧相当の圧力変化で 0.005% と極めて微少です。
したがって、水の圧縮性による影響は無視できるほどに小さいものと考えられます。
以上のことから、疑問点1の答えは次のとおりと考えます。
止水壁で締切られた締切内部の地下水は締切外部の地下水と連通するため、締切によって被圧水頭は消滅しない。
しかし、止水壁および粘土層を浸透して締切内部へ供給される地下水の浸透速度は極めて小さいため、盤ぶくれ現象を発生させるだけエネルギーを持たない。

疑問点2 リリーフウェルは水中ポンプで揚水しなくてもよいのか?

止水壁および粘土層の透水性が極小であり、止水壁本体および施工継手部からの漏水などがなければ、揚水は不要と考えます。
この場合、極論を言えばリリーフウェルは不要と考えます。
しかし、実施工においては地盤の不均一性や止水壁の変位などに起因して、止水壁から漏水の発生する可能性があります。
したがって、異常出水等に即応できるよう、水中ポンプをセットしておくことが必要と考えます。
井戸周囲からの湧水処理も考えておかなければなりません。
「穴を開ける(リリーフウェルを掘る)だけで、圧抜きができる」のは極めて希なケースだと考えます。

<管理者経験談>

某下水道関連工事において止水工法(地下連続壁工法)により立坑を掘削中、止水壁コーナ部より異常出水が発生しました。(土留壁のせん断破壊が原因と思われます。)
立坑内には掘削工事のドライワーク化を目的としたタマリ水処理用ディープウェルを設置していたため、掘削底盤にある粘性土層がわずかに盤ぶくれ現象を発生したものの、湧水がディープウェルに到達した時点で減圧され、現象はおさまりました。
これは、タマリ水処理用ディープウェルがリリーフウェルの役目を果たした事例です。

上記に関し、みなさま方のお考えはいかがでしょうか?