NO,32

限界揚水量について
投稿者:さか 投稿日: 1月27日(金)10時56分37秒

揚水試験の段階揚水試験で、標記の件についてご質問させていただきます。

揚水試験で、以下の条件で段階揚水試験を行いました。
・【地盤条件】 シルト混じり砂礫(既往調査では、K=10-3cm/sec程度)
・【井戸】 削孔径:550mm、掘削長:20m(ストレーナ7m)、揚水ポンプ:4in' 15kw
・【揚水量】 1.5m3/min迄で5分割で実施

当初、この様な地盤条件・井戸仕様で掘削長が20mもありますので、ポンプ能力が井戸の集水能力に負けることが想定され、井戸内水位はストレーナー上端迄下がらない→限界揚水量は算出できないと思っておりました。
ところが、水位低下(s)-揚水量(Q)の関係式をプロットすると、1~4段階のプロットが直線上にならび、5段階目が直線の延長線上より上の位置になる結果となりました。(限界揚水量は1.2~1.5m3/minとなる)
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(私の表現では、イメージが着かないかもしれませんで概略のデータです)
段階   Q    S
 1   0.3  0.5
 2   0.6  1.2
 3   0.9  2.0
 4   1.2  2.8
 5   1.5  5.0
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ここで、ご質問なのですが、当方のイメージでは、限界揚水量とは「井戸の集水能力の限界値」つまり、井戸内水位がストレーナの上端付近位まで下がった時点(井戸の集水能力≒ポンプ揚水能力)で発生すると思っているのですが、事例を含めて如何なものでしょうか?
今回の試験のように、ストレーナーの上端(GL-11m)の半分以下(段階5でGL-5m)迄しか水位低下が発生してない状態(まだまだ集水は可能)で、限界揚水量が発生するものでしょうか?
現在懸念しているのは、井戸洗浄が十分ではなく、きちんと井戸洗浄を行えば5段階目の水位低下量は3.5m程となり、限界揚水量は1.5m3/minになるのでは無いか?ということです。

Re:限界揚水量について
投稿者:利光 投稿日: 2月 4日(土)23時04分20秒

回答が遅くなりました。

現場揚水試験は地下水浸透理論などの難解な理論を取り扱いますので、私が苦手とする部門ですが、以下に私見を述べます。
井戸専門会社、土質調査会社などの専門技術者の皆様方にフォローを御願いいたします。

予備知識1 : 限界揚水量とは?

限界揚水量に関しては、様々なとらえ方があるようですが、私は、次のように考えています。
限界揚水量=井戸内に流入する浸透水流が層流域から乱流域に移行する境界点の揚水量

予備知識2 : 層流、乱流とは?

乱暴な表現ですが、次のような流れです。
層流:土粒子を動かすことなく、間隙中を整然と流れる浸透水流です。濁りはありません。
乱流:土粒子を押し流す勢いで流れる浸透水流です。濁っています。

「限界揚水量の発生」に対する回答:

限界揚水量は井戸の仕様、土質、初期水位などによって変動するものです。
本件の場合、井戸仕様が削孔径550mm×ストレーナ長7mであり、低下水位量S=5m時に揚水量q=1.5m3/minが得られていることから、周辺地盤の透水性は極めて大きいものと思われます。

シーハルトの井戸揚水能力算定式を適用して、逆算すると地盤の透水係数は次のようになります。
なお、この計算では井戸口径=削孔径としています。

q=2*3.14*r*Ls*√K/15*60 ----シーハルトの式
√K=q*15/(2*3.14*r*Ls*60)
=1.5m3/min*15/(2*3.14*0.275m*7.0m*60)
=0.031

K=0.031*0.031
=1E-3m/sec
=1E-1cm/sec  ---- 極めて大きな透水係数です。

以上のことから、本件の場合、以下のことが推察されます。

地山の地下水供給能力が大きいにも関わらずストレーナ長が7mに限定されているため、ストレーナ長7m分に相当するディープウェル揚水能力が限界揚水能力となった。
したがって、ストレーナ上端を地下水位面に設定していれば、1.5m3/minを超える限界揚水量が得られた可能性がある。


「井戸洗浄が不十分?」に対する回答:

q=1.5m3/minの揚水能力が確保されているので、井戸洗浄が不十分とは思えません。
無用の井戸洗浄によってフィルタ層が破壊され、井戸が砂を汲むことのないよう注意してください。

Re:限界揚水量について
投稿者:さか 投稿日: 2月17日(金)09時43分41秒

返信遅くなってしまいました... ご回答ありがとうございました。
限界揚水量については、文献等しらべてみましたがなかなか概念については載ってませんね。

揚水試験で、「地盤の透水性が想定以上で限界揚水量が得られなかった」というケースが良くあり、今回も想定以上の透水性だったので、当然限界揚水量が得られないと思ってたので、試験に問題があるのでは?と思ったわけです。

限界揚水量をデータ整理上で表現すると、S-Q関係図で水位低下量(S)が急に低下する時の揚水量(Q)になります。
私のイメージでは、Qをどんどん増やしいくと、地下水位も低下していき、地下水位がストレーナ上端付近に達すると、ストレーナの集水面積が減少・エアーを吸う等から井戸の集水量が低下して、水位低下が急にあがっていく この時が限界揚水量の発生時かなと思っております。
乱流とのイメージについては、確かに地盤の透水性が下がとの評価になりますので、水位低下量も増えますので参考となります。
しかしながら、井戸近傍で乱流が発生するには、井戸内・外の水位差が大きく無いと乱流にはならず、井戸内・外の水位差が大きいということは、結局、井戸内水位がストレーナー上端以深の時にならないと発生しないと思いますので、今回の試験状態では乱流状態にはなりませんね...

いずれにしろ空論ですので、限界揚水試験での事例がありましたらご呈示頂ければ幸いです。

段階揚水試験の事例
投稿者:利光 投稿日: 2月18日(土)17時46分28秒

東海地方で行われた現場揚水試験の報告書を抜粋して、ご紹介いたします。
ディープウェル設計用の基礎データ収集を目的として実施されたものです。
参考にしてください。


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■土質条件
GL  0.0m~GL- 4.0m  表土・シルト・細砂
GL- 4.0m~GL-24.0m  砂礫
GL-24.0m~GL-29.0m  粘土
自然水位  GL-3.25m

■揚水井戸仕様
井戸口径   φ600mm(鋼管)
井戸深度  GL-25.0m
ストレーナ長  20.0m(GL-4.0m~GL-24.0m) 開口率20%
掘削工法  オールケーシング掘削工法(ベノト掘削工法)

■段階揚水試験結果
step   Q(m3/min)      t(min)      S(cm)      WL(GL-m)
-----------------------------------------------------------
1     0.225         30        40.0        3.65
2     0.384         65        92.5        4.18
3     0.629         60       220.0        5.45
4     0.757         60       355.0        6.80
5     0.945         75      1495.0        18.20

logQ-logSグラフのstep3~step4間に折点が出現し、限界揚水量はQ=0.74m3/minとなる。

■試験結果
透水係数 0.0291cm/sec~0.0638cm/sec

■限界揚水量に関する記述内容
(前文略)
限界揚水量を算出するには揚水量Qと水位低下量について両対数紙にプロットする。
この時、グラフ上で認められる折点に相当する揚水量を限界揚水量とする。
このことは、適正揚水量の範囲内であれば、揚水量Qの増加に伴い揚水孔内のSは両対数紙上でほぼ直線的な増加をするのに対し、過剰揚水ではQとSとのバランスが変化し、グラフ上で折点が認められることによる。
つまり、折点は揚水孔への地下水の流れが層流から乱流へと変化する点である。
従って、この折点に相当する揚水量が限界揚水量となる。
また、折点が認められない場合はポンプ能力限界の揚水量を限界揚水量とする。
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Re段階揚水試験の事例
投稿者:さか 投稿日: 2月20日(月)09時42分43秒

貴重なデータのご提供ありがとうございました。
ご提供のデータのように、井戸内水位が最低でもストレーナ上端(GL-4m)まで下がってれば、限界揚水量が出ることは、理解できるのですがね^^
当方の限界揚水試験結果では、ストレーナ上端(GL-13m)、水位低下量(GL-5m)と地下水位がストレーナにかすっても無い段階に限界揚水量が発現するとは

揚水試験で、妙なデータがでると、揚水井・観測井の洗浄不足、地盤の不均一性、計測ミス等、何が原因なのか探るのが大変ですね...(この辺は経験でフォローになるのでしょうが)

今回は当試験結果を用いて解析をしますので、何か分かったらまたご報告させていただきます。

P.S
>限界揚水量を算出するには揚水量Qと水位低下量について両対数紙にプロットする。
「地盤調査方法と解説」 地盤工学会 の改訂により、片対数紙に変わったこと念のためお知らせしておきます。